「茨城の焼却場周辺で血液から高濃度ダイオキシン」

平均の20倍以上もの異常に高い数値



〜朝日新聞1998/06/04朝刊〜

 茨城県新利根町にあるごみ焼却場周辺の住民を対象に血液検査をしたところ、極めて高い濃度のダイオキシン類が検出された。調査した摂南大薬学部(大阪府)の宮田秀明教授の研究グループが4日、京都市で開かれる環境化学討論会で発表する。最高濃度は、欧米先進国や国内の調査での平均的濃度の20倍以上だった。ごみ焼却場周辺に限定した血液検査は国内で初めてで、「事故などの例を除いてこれほど高い数値は聞いたことがない」と研究者は話している。同焼却場をめぐっては昨年11月、周辺住民が「ごみの不完全燃焼でダイオキシン類が発生し、焼却場周辺はがんで死亡する率が高い」などとして、操業停止などを求める訴訟を起こしている。
 血液は、同町上根本にある城取清掃工場のごみ焼却場から約2キロ以内に住む20代から80代の60人を対象に、一昨年3月に採取した。このうち、分析が終わった18人について発表する。
 ダイオキシン類濃度が最も高かった女性は、毒性の最も高い種類に換算した値で血液中の脂肪1グラム当たり約460ピコグラム(1ピコは1兆分の1)。次いで約200ピコグラム(男性)、約140ピコグラム(女性)。最低でも約22ピコグラムだった。
 国立環境研究所などによると、国内外のこれまでの調査では20ピコグラム程度が平均的という。
 摂南大の研究グループは昨年6月、ごみ焼却場の風下側の土壌から1グラム当たり250ピコグラムと、高濃度のダイオキシン類を検出したと発表。周辺住民が同年11月、ごみ焼却場の操業停止と隣接地での新工場建設中止を求めて、管理する竜ケ崎地方塵芥処理組合を提訴している。
 これまでの口頭弁論で、同組合は「健康被害があったとしてもダイオキシンとの関係は実証されていない」などと反論している。

 森田昌敏・国立環境研究所統括研究官の話 異常に高い値で驚いている。血液中のダイオキシン類濃度が脂肪1グラム当たり100ピコグラムを超えるような数字は、化学工場の事故などの例以外に聞いたことがない。濃度が高かった住民の健康調査をして、ダイオキシン類の発生源や汚染実態、人体への影響を徹底的に解明することが必要だ。

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