「廃棄物処理施設の事故率は全産業の7倍」

1992年から1996年管理者協調べ



〜朝日新聞1998/07/08朝刊〜

 全国の一般廃棄物の処理施設で起きた事故がこの5年間で約360件にのぼり、30人が死亡していることが、日本廃棄物処理技術管理者協議会(青木久彌会長、約6000人)の調査でわかった。爆発、火災、転落、酸欠・ガス中毒など多岐にわたっており、事故の発生率は全産業平均の7倍以上にも及んでいる。化学物質を含む危険な廃棄物が増えながら、安全装置や作業マニュアルが完備せずに起きた事故が多く見られるなど、安全管理と対策の遅れが浮 き彫りになった。

 同協議会は、廃棄物処理施設に勤務する技術管理者でつくる団体。一昨年から昨年にかけて、全国の一般廃棄物処理施設にアンケートし、37都道府県の約4000施設から回答を得た。全国にある施設の7割強に当たる。
 1992年度から1996年度までに起きた事故は計358件。そのうち爆発が74件、火災が53件、残りの大半は労災事故で、転落が44件、機械の巻き込みが24件、酸欠・ガス中毒が11件、機械に挟まれたのが19件、薬品やけどが11件など。
 死亡事故は25件(30人)。焼却施設が13件と多い。重傷事故も計52件あり、焼却施設が約6割を占めた。
 事故の原因では、スプレー缶の爆発や注射針など危険物の混入によるものが101件、安全装置が装備されずに起きたのが25件、設備の老朽化などが36件、安全手順を守らなかったのが58件、作業マニュアルの不備が27件あり、個人より施設の装備や管理に問題があるとされるケースが目立った。

 処理施設と全産業を100万労働時間当たりの死傷者で比べると、昨年度は処理施設の13.6に対して全産業は1.8。産業界全体として下がり続けているのに対し、処理施設は高水準のまま推移している。

 協議会メンバーで分析を担当した若倉正英・神奈川県産業技術総合研究所専門研究員は「爆発事故を起こすスプレー缶をはじめ、さまざまな化学物質を含むごみが持ち込まれ、危険性が高まっている。出す側のモラルを高めると共に、国も関心を持って対策を立ててほしい」と話している。

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