「カップめん容器、1割が紙に「環境ホルモン無関係」…消費者には通じず」



〜朝日新聞1998/11/18朝刊〜

 紙容器のカップめんが増えている。日清食品などカップめんを製造、販売する 大手5社の製品のうち約1割の25種類に達し、さらに増える勢いだ。背景には、 内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)論議の高まりによる、ポリスチレン製容 器のカップめんの販売不振がある。各社とも、紙容器の増加と環境ホルモン問題 との直接の関係を否定しているが、消費者の懸念の広がりには勝てないようだ。

 業界トップの日清食品の9月中間決算の売上高は、前年同期に比べ4.6%減 で、22年ぶりの減収となった。売上高の7割を占めるカップめんが4.8%減と なったのが響いた。要因の一つは「容器に対する安全性議論の影響」だ。

 同社が8月から流しているテレビCMでは、女優の酒井法子さんを登場させ、 「1971年。カップヌードルが生まれたとき、私も生まれました。私はこれからも カップヌードル」のナレーション。「長い間、消費者に親しまれてきた商品であ り、安心して食べてもらいたい、との願いを込めた」(広報部)という。

 同社の90種類あるカップめんのうち、紙容器は現在5種類だ。

 業界2位の東洋水産は、8月から主力の「ホットヌードル」の容器を紙製に切 り替えた。「環境ホルモンをめぐる議論に結論は出ていないが、消費者の間でニ ーズが高まっている」と北村勝久常務。11月から新発売した和風めんも紙容器に した。

 同社のカップめんの上期売上高は、前年同期より3.4%減少。カップを使わな い冷凍めんが3割増になったのとは対照的だ。

 エースコックも、10月から主力の「スーパーカップ」を紙容器に切り替えた。 ポリスチレンに比べ、5割ほどコストが高くつくが、いずれは全商品を紙製品に 替える方針という。ただ、理由については「環境ホルモンの議論とは無関係。紙 の方がデザインの印刷がきれいにできるため」(広報部)と説明する。

 厚生省の検討会が今月9日にまとめた中間報告は、ポリスチレンなど3物質に ついて「健康に重大な影響が生じるという科学的知見は得られておらず、現時点 でただちに使用禁止にする必要はない」と説明。ただし「未解明な点が多いた め、引き続き調査研究を進めることが重要」としている。

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