「環境ホルモン、へその緒から検出−総合研究の必要性指摘」



〜朝日新聞1998/11/24朝刊〜

 内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)と疑われる物質が人間のへその緒に含まれていることが、東京農工大、京都大、横浜市立大の共同研究チームの調査で分かった。こうした物質は体内で代謝されやすく、胎児へは移行しにくいという従来の考え方を覆しかねない結果だ。母体や胎児などを総合的に調べる必要性を強調する。研究成果は、来月11日に京都市で始まる環境庁主催の国際シンポジウムで報告される。

 調べたのは、食器などの素材になるポリカーボネートの原料「ビスフェノールA」と、洗浄剤などに使う界面活性剤が分解されてできる「ノニルフェノール」。二つとも環境庁が作った環境ホルモンの容疑リストに挙がっている。体内に取り込まれても代謝されやすく、ダイオキシンやポリ塩化ビフェニール(PCB)のようには体内に蓄積しないと考えられてきた。

 胎児への影響が本当にないのかを確かめようと、東京農工大の高田秀重・助教授(環境有機地球化学)たちは、出産直後に提供された、へその緒を調べた。

 3人分の組織を分析した。ビスフェノールAは、すべてから組織1グラム当たり0.85−3.11ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)の範囲で検出された。ノニルフェノールも、2人の組織に1グラム当たり1.22−1.98ナノグラムほど含まれていた。環境ホルモンは一般に、ナノグラム単位のごく微量でも世代を超えて生殖機能などに悪影響を及ぼすといわれる。

 高田さんは「代謝されやすくても、連日のように摂取していると、体内にたまる恐れがある。母体や胎児を幅広く調べる必要がある」と話す。研究チームの京大医学部の森千里・助教授(発生学)も「すぐに胎児へ悪影響があるわけではないが、赤ちゃんが化学物質にさらされていることになる。対策を考えるべきだ」と指摘する。

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