「野焼きダメ─ダイオキシン問題で風当たり/雑草に手焼く─自治体受け入れ拒絶、発火の恐れも」



〜朝日新聞1998/12/28朝刊〜

 ダイオキシン問題への関心が高まるなか、河川敷で刈り取った雑草の処分に建設省が手を焼いている。従来は河川敷で燃やしていたが、「野焼き」に対する風当たりが強まり、自治体の焼却場に持ち込む方針を打ち出した。ところが、一般ごみの受け入れに精いっぱいで、「雑草まで燃やす余裕はない」と拒まれるケースが続出。刈り取られた雑草は、河川敷に大量に置き去りにされている。乾燥すると摩擦やたばこのポイ捨てで発火する恐れもあるとして、こっそり野焼きをしているところもある。

 千葉県流山市の江戸川河川敷。川の堤防に、機械で刈り取られた雑草が放置されていた。建設省江戸川工事事務所から委託を受けた業者が年3回、約12キロにわたって堤防を除草する。刈り取った雑草をその場で燃やしていたが、この11月、市役所から「待った」がかかった。「煙を見た住民が心配している」という。

 同事務所は市の焼却場での処理を頼んだが、断られた。焼却能力は1日あたり140トンしかなく、満杯に近い。「雑草を受け入れる余裕はない」という。

 対岸の埼玉県吉川市でも雑草が刈りっぱなしだ。同市を含む5市1町は、1日 800トンを焼却できる大型施設を運営する。今年春から10月までに、同工事事務所などから雑草計 850トンを受け入れた。しかし、雑草全体の量からすると、一部だという。

 同県川越市にある建設省荒川上流工事事務所は、雑草のたい肥化を試みた。しかし悪臭がするので、民家から離れたところで作業しなければならないうえ、手間がかかる。管内で刈り取る年間約 800万平方メートルの雑草のうち2、3割をたい肥にするのがやっとだ。

 建設省は今年度当初、「ダイオキシン問題に配慮して、原則としてごみ焼却場に運ぶように」と指導。埼玉県などの自治体も「野焼きをするなと業者を指導しているのに、役所が自ら燃やしていては示しがつかない」と、今年春から県が管理する河川敷での野焼きを禁じている。

 しかし、さばききれない雑草に、各地の建設省工事事務所で野焼きをする例が続出。同省は「自粛するようにしているが、河川敷で燃やしても違法というわけではない」と、黙認の姿勢だ。

 ダイオキシン問題に詳しい摂南大薬学部の宮田秀明教授は「雑草を燃やしても微量だがダイオキシンが出る。煙害の問題もあるので、野焼きはしない方がいい。たい肥化を進めるべきだ」と指摘する。

 放置された雑草について、同省出先機関のある担当者は「乾燥する冬は自然発火する恐れもある。大事に至らなければいいが」と話している。

Back