「焼却場周辺の野菜調査へ―ダイオキシン 距離と濃度分析/厚生省、土壌含め総合評価」



〜朝日新聞1999/03/08朝刊〜

 ダイオキシン類の発生源となっている焼却施設が、近くでつくられている野菜など、周辺環境にどう影響するかについて、厚生省が調査に乗り出す。これまで、こうしたデータの蓄積がなく、テレビ朝日の報道が引き金になった埼玉県所沢産の野菜販売中止騒動で、消費者の不安を招く大きな原因となった。施設からの距離に応じて、野菜などに含まれるダイオキシン類濃度を測定するなど、焼却施設が周辺の作物や大気、土壌などに与える影響を総合的に評価・分析する。

 調査対象は全国で少なくとも4、5カ所の廃棄物焼却施設を選ぶ。その施設から四方に向かって、一定の距離ごとに野菜や土壌などを採取、ダイオキシン類濃度を調べる。施設から排出されるダイオキシン類濃度と施設からの距離が、野菜、土壌、大気などに含まれるダイオキシン類濃度にどう影響しているかを明らかにすると同時に、焼却施設のない地域とも比較する。

 とくに所沢で問題となった野菜については、地元の野菜ばかりを食べている場合のダイオキシン類摂取量に問題がないか点検。調査の結果、厚生省の定める1日耐容摂取量(TDI=一生食べ続けても健康に影響がないとされる量)に照らして、健康に影響があるとみられるような数値が出てくれば、立地や排出の規制などを含めて検討するとしている。

 この場合、調査の材料を提供してもらうことになる周辺農民や住民の理解と協力が得られるかが課題となる。結果次第では所沢産野菜の販売中止騒動のように農家にとって死活問題になりかねない。このため、厚生省は、分析した結果は公表するが、生データについては、調査地点をどこまで特定するかなど、公表方法を慎重に検討している。

 これまで厚生省は、ダイオキシン類汚染が他地域よりひどいのではないかと指摘されていた焼却施設周辺の環境調査を実施してこなかった。しかし、所沢産野菜のような騒動が、ほかの焼却施設周辺地域で同様に起こることも十分に考えられるとして、「消費者や住民の不安を取り除くためにも実態把握は欠かせない」と判断し、調査に踏み切ることにした。

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