「精子の数が減少傾向−28年間で6000人調査−慶大」



〜琉球新報1998/07/10夕刊〜

 最近の日本人男性の精子数は、1970年代に比べ一割程度少なくなっていることが、吉村泰典・慶応大医学部産婦人科教授らによる調査で明らかになった。慶大に保存されている延べ2万人分を超す健康な男性の精液データのうち、28年間の約6千人について中間集計。大阪市で開催中の日本受精着床学会で10日午後、発表する。
 男性の精子の減少については、欧州を中心に複数のグループが報告しており、内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)の影響が疑われている。吉村教授は「まだ中間報告の段階」として解釈には慎重だが、これほどの大規模調査は国内初で、環境ホルモン論議に影響を与えそうだ。
 慶大では、不妊症の夫婦のために健康な男性から提供された精子を妻の子宮内に注入する「非配偶者間人工授精(AID)」という方法を1949年から実施している。今回は1970年から1998年までの28年間に慶大に登録された延べ6048人の精子提供者(18〜25歳)について、精子の数と運動率を調べた。
 その結果、精液1ml中の精子の数は、1970年代に平均6500万個あったが、1980年代は6300万個になった。1990年代は6000万個を割り込み、1970年代と比べると約一割減っていた。一方、精子の運動率に差はなかった。
精子数は、1990年代に入ってから減少が目立つ傾向があり、吉村教授らは詳しい分析を急いでいる。今秋にも、2万人分のデータに基づく最終報告がまとまる見通しだ。

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