「美しい地球をこどもたちに/ゼロエミッションフォーラム'98(07/18開催)」



〜琉球新報1998/07/23朝刊〜

 生殖機能への障害が懸念される内分泌かく乱物質「環境ホルモン」で代表的なダイオキシン類の汚染が全国で深刻になる中、「美しい地球をこどもたちに―アジェンダ21おきなわ」をテーマにした『ゼロエミッションフォーラム '98』(主催・沖縄ゼロエミッション推進実行委員会、県、共催・琉球新報社)が18日、那覇市の県女性総合センターで約 300人を集めて開催された。基調講演、パネル討論を通し、ごみの減量化や環境保全に向けた行政、消費者、企業の役割や課題を模索した。

パネリスト

「行政責任痛感している」大城貴代子氏(県文化環境部長)
「意識改革し無駄なくす」渡久地澄子氏(環境アドバイザー)
「天然資源の大切さ学べ」富永美由紀氏(子供の本研究家)
「大切な企業の情報開示」渕辺 美紀氏(潟rジネスランド代表取締役)

コーディネーター

伊波美智子氏(県リサイクル推進協議会会長)



伊波美智子「まず、それぞれの立場から発言を。」

富永美由紀
    「ストックホルム(スウェーデン)で暮らしていたが、あれだけの森林国でありながら、トイレットペーパーもキッチンペーパーも皆、再生紙。日本ではあふれるようにバージンパルプを使っているというのに。天然資源の大切さを子供のころから、学んでいるのだ。バリアフリー(建造物での障壁)という特別な言葉もない。それが当たり前の国。休日になると、森林を歩き、身近な自然、生活の中から環境というものを考えている。」

渡久地澄子
    「環境カウンセラーとして地域を回っているが、どこでも心配しているのは、環境ホルモンのこと。その『横綱』が、家庭ごみが焼却されて出るダイオキシンだ。煙だけでなく、残りの焼却灰から土壌に染み出て海に流れ、人間に(めぐって)来る。沖縄の最終処分場の7割が不十分だともいう。このままでは子供の未来が奪われてしまう。地域でごみの分別収集の仕方が異なるのも問題。どんなことがあっても燃やせるごみと、燃やしちゃいけないごみはきちっと分けてほしい。」

渕辺 美紀
    「企業は利益をつくり、事業を拡大させないといけない。そこに環境との調和がいわれているのが、いまの状況だ。それを企業だけに責任を転嫁するのも、どうなのか。OA化、情報化でペーパーレスになるといわれてきたが、逆に紙(の使用)は増えている。特に官公庁からの文書が多いこと。インターネットが開発されてもなかなか、それは直らない。コンピューター機器のリサイクルにしても、大型のものはまだいいが、小型のパソコンはリサイクル率が低い。リサイクルしにくい材料が使われており、時代に逆行している。」

大城貴代子
    「4月に文化環境部長に就任して以来、本島や宮古、八重山を視察したが、県が抱える環境問題の課題の多さに頭を痛めている。県内の最終処分場は31施設。特に厳しいと思うのは、過疎地とか離島など自然の美しい所で、ごみを燃やしていたり、谷とか沢に埋め立てをしたりしている所がある。焼却炉もなければ、埋め立て(最終処分場)もない離島市町村があり、その解決も課題だ。」

伊波美智子「私たちは、将来に、つけを回さないという責任を持つべきではないか。そのために何をすればいいのだろう。」

渕辺 美紀
    「企業の側が(リサイクルに)かかるコストを再び生産につなげるという意識に切り替える。エコビジネスといった言葉も出てきているくらいだ。その産業は2010年には37兆円にもなるといわれている。ただ「だめだ」ではなく、次へつなげるビジネスに真剣に取り組むべきだ。それと、大切なのは、ディスクロージャー(情報の開示)。「数字」を出すのではなく(生産に関係して)環境に危険性が生じれば、早めに情報を出すこと。(隠した結果)大きなつけが回ってくるより、(消費者と)一緒に取り組むのが大事。

伊波美智子「ごみを出す側としての行政はどうなのか。」

大城貴代子
    「県庁には多くの職員が働いている。再生紙の利用やごみの分別排出、お昼休みの消灯など、部が環境保健部の時代から(環境へ配慮した取り組みは)率先してやっており、また呼び掛けてきている。」

渡久地澄子
    「地域を回って痛感したが、ダイオキシンの大元といわれる塩化ビニール類が、生活の中に入り込んでいるのだ。豆腐を買えば、そのパック。ブドウもそう。燃やせるごみより、燃やしてはいけないごみになる物がずっと多い。老人介護にも課題はある。紙おむつのことだ。施設からも、どれだけ出ているのか分からない。また、農村での、ハウスのビニール。かつては自分(農家)でせっせと燃やしていたが、それらの処理をどうするのか。都会には都会、農村には農村の悩みがある。」

伊波美智子「企業や行政は、消費者の声をどんどん聴いてほしい。一方、子供たちへの環境教育はどうなのか。」

富永美由紀
    「大人が変わらないと、子供は変わらない。まず、私たちが自然を大切にする消費者であるべきだ。日常生活の中でそうしていくのが、環境教育ではないのか。」

大城貴代子
    「行政の責任を痛感している。昨年、県でもゼロエミッション推進会議がつくられた。自治体、市民、企業の協力も得て頑張りたい。」

渡久地澄子
    「生活をスリム化し無駄を徹底してなくすこと。リサイクルできないものは買わず、再生紙を進んで使う。意識改革だ。」

渕辺 美紀
    「ペットボトルや缶(の飲料)が売れなくなってダメージを受ける企業も出てくるだろう。企業は利益だけでなく、環境に配慮した物をできるだけつくるようにすべきだ。」

伊波美智子「松田さん。最後に一言。」

松田美夜子
    「沖縄もスイスのように電気自動車を使ってはどうか。それと地元にはビールも酒もある。何も本土の大手メーカの物を買う必要はない。お店で『私は(レジ)袋は要りません。沖縄のビールがいいんです』などと。沖縄の産業を育てる中でごみを減らしてほしい。」

Back