東京湾底の土砂でダイオキシン調査
−太古から現代の地層−






















 東京湾の海底に堆積(たいせき)した地層のダイオキシン類濃度を、環境調査会社「環境管理センター」の環境基礎研究所(八王子市)が測定する。地質の専門家と協力し、約1年間かけて年代ごとの分析をする予定。同研究所は、東京湾底の汚染状況を知るだけでなく、工業化やごみの焼却が始まる前の地層を調べることで、現在、周辺自治体から依頼されている土壌調査の測定結果を評価する手がかりにしたいとしている。
 分析に使うのは、東京湾アクアラインの川崎人工島建設の地質調査で実施したボーリングの土砂。大手建設会社から研究資料として譲り受けたという。
 多摩川など河川から流れ込む土砂が堆積してできた表層部から、深さ200mの何十万年も前の地層まで含まれており、古代の火山噴火や火災などによる汚染状況から、工業化された後に堆積した土砂の状況までわかるとみられる。
 地質の専門家などにも協力を求めて、分析や評価方法を検討し、1年かけて年代別の分析をする。調査では主に、ごみの焼却が始まる前の江戸時代以降の土について細かく分析する予定という。
 見本には、ダイオキシン類に関する土壌汚染の環境基準がない。環境庁は1998年度から全国約40カ所の表層部の土を採取してモニタリング調査を始める。地中の濃度測定については、 愛媛大の脇本恵明教授(環境計測学)が神戸沖の海底から深さ8mまでの土砂を採取・分析した例があるが、深さ200mという規模の調査は日本では初めてという。
 同研究所は自治体や民間企業から、大気や排煙、焼却灰のダイオキシン類濃度の測定を委託されているが、ダイオキシン汚染の関心が市民に広まる中、最近は土壌測定の依頼が増えている。そのため、現在の上層部の土の測定値を評価するうえで、工業化や都市化が始まる前の土壌に含まれるダイオキシン類濃度を調べる必要が出てきたという。
 今回の調査について、脇本教授は「いつごろからダイオキシンの汚染が始まり、濃度が高くなったのかなどが分かるだろう。集まったデータは、東京湾のダイオキシンの蓄積の歴史を知るうえで大切になると思う」と話している。

〜朝日新聞1998/02/23朝刊〜


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