「環境問題か金かが悩み−一般廃棄物最終処分場」

厳しい負担伴う施設建設


 家庭などから出るごみを埋めたてる一般廃棄物最終処分場。厚生省が初めて実施した実態調査で、県内の30の処分場のうち、22カ所までが基準に「違反」または「不適切」と断定された。処分場の設置は市町村の責任だが、厚生省の基準を満たす処分場は建設費も高額で、厳しい財政事情を抱える本島北部の過疎地域や離島町村には、県に無届けで“安上がり”な処分場を建設してしまう例も。地下水汚染の危険があり、事態は深刻だ。
 東村、大宜味村、伊平屋村、石垣市、竹富町−。6日、公表された違反処分場のリストには、北部地域や離島の市町村の名が並んだ。ひっ迫した財政と、人里離れた「ごみ捨て場の適地」が多いことが、市町村に違反処分場を選ばせている。
 伊是名村は1991年、村単独事業として、遮水シートや汚水処理施設を持たない現在の処分場を建設した。「処分場建設費には2分の1の国庫補助出るが、村負担分に財政的に対応できない面があった」(村福祉課)ためだ。
 しかし、この処分場も満杯になりつつあり、村は1999年度に基準に会う処分場を着工する予定。建設費は8億円程度と見込まれ、その半分の負担は、財政規模が43億円(1998年度予算案)しかない村に、重くのしかかる。
 厚生省の調査では、違反処分場を抱える22市町村のうち16市町村が、7年以内に基準に会う処分場を建設すると回答。残る6町村は、建設のめどが立たないままだ。
 大宜味村役場から、車で約15分。山道を分け入った先に、村のごみ捨て場がある。緑深い山のくぼ地に、不燃ごみ、粗大ごみ、焼却灰が投棄されている。しばらくごみを捨てては上から土をかけ、またその上にごみを捨てている。
 村厚生課は「くぼ地は山の下の方までつながっているので、何でも使える。一番近い集落でも直線距離にして3キロほど。住民からの苦情は全くない」と説明する。一方で地下水汚染の危険については「水がどこに流れていくのか、どんな影響があるのか、調査をしていないので分からない」と、歯切れが悪い。
 建設費や維持費の負担から、新しい処分建設に踏み切れない。「国や県にいつまでも黙認してもらえるか。できる間は使いたい」が本音だ。同様に遮水シートや汚水処理施設を備えた処分場の建設の見通しがない伊平屋村も、「小さい島にこんな高級な処分場を造れと言われても・・・」と困惑気味だ。
 名護市は1995年、それまでの処分場がいっぱいになったのをきっかけに、約11億円を投じ、基準に沿った処分場を建設した。市環境衛生課は「お金をかけた施設は1年でも長く使いたいから、1997年からリサイクルでごみの減量化を進めている」と、処分場建設の思わぬ効果を説明する。
 「農漁業の振興や老人福祉施設などに比べ、ごみ処分場は、住民の要望も低く、財政上後回しにならざるを得ない」。これは、市町村担当者の共通認識だ。市町村、地域住民が「ごみに金をかける」ことをどう受け止めるか。理解を深めていく作業が欠かせない。


〜沖縄タイムス1998/03/15朝刊(北部支社・阿部岳)〜

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