「カレイにもメス化現象、オスから卵黄たんぱく─水産学会で報告」



 日本沿岸で取れたオスのカレイの体内からメスにしかないはずの卵黄たんぱく質が検出されていることが、1日、日本水産学会で発表された。「メス化現象」の一種とみられている。淡水魚では過去に、河川の水に含まれる環境ホルモン物質が原因だと特定された例がある。
 東京水産大の橋本伸哉助手(環境化学)と北海道大の原彰彦教授(魚類生化学)らの調査で明らかになった。
 昨年5月から今年3月にかけて、関東近海と北海道近海で、それぞれ天然のカレイを採取。血清中の卵黄たんぱく(ビテロゲニン)の濃度を比較した。
 関東近海では、オス71匹のうち30匹から、血清1mlあたり100ナノグラム(1ナノグラムは10億分の1グラム)を超える卵黄たんぱくを検出。最高は670ナノグラムだった。5、6月はオスの濃度がメスとほぼ同レベ ルになった。
 一方、北海道近海のオスは平均20〜30ナノグラムで、どの数値も「測定法で判断できる範囲以下で、存在しないと考えてよい値」だった。
 橋本助手は「関東近海のカレイは何らかの影響を受けて内分泌機能がかく乱されているといえる。原因物質の研究を急ぎたい」と話している。
 イギリスでは過去に、ニジマスのオスからビテロゲニンが検出され、原因は洗剤やプラスチックの添加剤に使われる「ノニルフェノール」と特定された。この物質は環境ホルモンの一つで、多摩川など日本の河川でも検出されている。

〜朝日新聞1998/04/02朝刊〜

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