<ダイオキシンの発生を防ぐために>

もとぶ野毛病院専務理事 上田英代


 去る6月20日環境庁は、初めてダイオキシン類の昨年度大気中濃度を、地名とともに公表した。ダイオキシンは、ベトナム戦争当時アメリカ軍の枯れ葉剤の中に混入していて、戦後多くの流産や奇形児を生んだ猛毒物質であるが、日本での大気中のダイオキシンは主に一般廃棄物のゴミ焼却場から排出される。ダイオキシン類濃度の測定は、隔年で4回目の実施であるが1990年の測定開始以来最高の濃度であり、都市部では欧米各国都市部の10倍もの濃度である。しかも焼却施設から遠く離れた測定地点からも高濃度で検出された。このことはダイオキシン汚染が既に広範囲に広がっていることを裏付けている。このような状況は、あまりにも行政の対応が立ち遅れていることを示している。
 第一に、1990年の測定開始時からすでに、主たるダイオキシンの発生源が一般廃棄物の焼却炉であることは指摘されながら、その量は微量であるとして放置したことである。ダイオキシンリスク評価検討会(環境庁)の中間報告をみても微量で有毒であることは明らかであり、またヒトでは非常に代謝されにくく、蓄積されていく物質であることもかなり分かっていたはずである。たとえ微量であっても、ダイオキシンが検出されたこと自体を問題として当時から対策を立てるべきだったのである。
 第二に、市町村の行政区単位でのゴミの自己処理の原則をあっさり捨て、一日100t以上処理能力のある大型焼却炉へ集約させようとしていることである。都市部で毎日大量に出るゴミをどこで処理するかという問題は、東京では江東ゴミ戦争とまで呼ばれた問題に発展した経緯があり、他区や、農村や、離島に都市部のゴミを負担させることは、受入側の強い反対に会うことは必定であり、その後、地域内自己処理の方向に進んできたのであり、中小の焼却炉廃止の方針を進めれば、この問題が再燃することは想像に難くない。この点について全く考えられていない。
 第三に、焼却炉の寿命に関する諸問題である。炉の寿命は約20年のため、その度に数十億円の建設費がかかる。大型炉への集約も中小炉の更新時期に行われるため、集約自体も最終的には10年後から20年後とのことである。その間、中小炉の改良工事、集塵装置の取り付け等でしのぐらしいが、この費用も馬鹿にならない。20年毎に数十億、燃料費等の維持コストも高いとなれば、今後の少子化社会にどれほどの負担がかかるか計り知れない。この点についても何ら見通しがたっていない。
こうした主な問題に対し、焼却炉の大気汚染防止法による規制だけでは解決しきれないことは明らかである。文部省は、9月26日小中高の焼却炉全廃の方針を公表した。「健康優先」の方針は大変ありがたいが、児童生徒への重要な環境教育のチャンスを失った気がする。何を焼却したらダイオキシンが発生し、何度以上なら完全分解し、燃焼温度を高めるにはどうしたらいいか等を学習し、水分が80%以上の生ゴミは別処理したほうが熱効率がいいのではないか、徹底したゴミ分別、リサイクル等のゴミ減量作戦を学校から始めよう等々、実践的学習を進めるべきであって、ただ焼却炉全廃では「考える力」が育たないではないか。ゴミ焼却に関する詳しい調査結果がでるまでは重要な環境教育の期間として焼却炉は一時中止とするのが妥当ではあるまいか。
そして重要なことは、行政、企業、住民がそれぞれの立場で早急に対策をたて、出来ることから即実行に移すことである。ドイツでは既にゴミ問題の流れは、「ゴミ処理の方法の能率化からリサイクルそして不必要なゴミの回避」となっている。アメリカでは「ゴミ汚染に対し、企業責任を徹底的に追及」し、費用を受け持たせる。日本でも、家庭や企業の出口で、徹底した分別収集、リサイクルを進め、ゴミの減量化を進めるべきであろう。そしてゴミの種類別焼却、種類別処理を促進し、そうした事業、企業に対し行政が補助金を交付していくべきだろう。ゴミを種類別焼却したほうがコストは低く抑えられるし、焼却炉の寿命も延び、維持費も少なくて済む。徹底した分別収集を義務づけることがゴミ問題への意識を高め、高い費用をかけなくても徐々にダイオキシン発生を減らして行けると考える。
 もとぶ野毛病院(沖縄県本部町)ではすでに、入院患者150人分の給食より出る生ゴミと、職員の家庭の生ゴミ(毎日80Kg)を有機肥料化している。生ゴミを別処理するだけでも、市町村焼却炉の燃焼温度は上がり、負担がかなり減ると考えるからである。まずできるところから早急に始め、自分達の町は自分達で守ろうの気概を持ってゴミ問題を解決して行きたい。


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