[大型焼却炉はダイオキシン発生を完全に防ぐことができるのか−A]

 去る1997年4月11日、厚生省より発表されたダイオキシン濃度報告済み施設は全国で1150施設である。その後、調査施設は増えて12月現在報告済み施設は1641 未報告施設は98 ダイオキシン濃度が80ngTEQ/m3 を越えた施設は107基であった。 仮にこの調査報告が正しくされたものと仮定して詳しく調査してみる。 (調査報告内容によっては国や自治体からの補助金をカットされる場合や、焼却炉の休止や廃止の場合があるため、必ずしも正確になされたとはいえない場合も考えられる。)
 論をわかりやすく進めるために、4月11日発表の資料を使って考えてみる。 グラフ1は、処理能力をX軸にダイオキシン濃度をY軸に散布図を描いたものである。500t以上の焼却炉からは基準値以上のダイオキシンは排出していないので、500t以下の焼却炉について再度グラフ化したものが グラフ2である。 この図を見る限りでは、100t以上の処理能力をもつ焼却炉がすべて80ngTEQ/m3の基準値を下回っているわけではないし、また100t以下の処理能力の焼却炉でも基準値を下回っている炉がある。では、厚生省は何を根拠に「今後建設される焼却炉に対する国庫補助は、原則としてダイオキシン排出量の少ない全連続炉のみとする。」「原則として、一日の処理能力が100t以上の焼却炉に集約していく」としたのであろうか。大型全連続炉の集じん機の種類別にダイオキシン濃度をグラフにしたのがグラフ3グラフ4である。これをみると明らかにバグフィルター方式のほうがダイオキシン濃度が低いことがわかる。
 しかし忘れてならないのは、平成9年5月26日発表の廃棄物処理基準等専門委員会の報告によれば、
(http://www.asahi-net.or.jp/~xj6t-tkd/env/f_guide/szu1.html)
燃焼温度が1000℃以上でも、ダイオキシン発生は完全に0にはできないことである。何度か報告しているように、ダイオキシンは非常に微量で人体に影響し、
(http://www.eic.or.jp/eanet/dioxin/hr_r_idx.html)
分解されにくく蓄積していく物質なのである。いずれにしろ、単に100t以上の大型焼却炉で、焼却すればダイオキシン濃度が低くなるという単純な方策では事足りぬことは明らかである。
 11月22日、東京都は焼却灰をすべて溶融する方針を定めた。ゴミ焼却過程でもできるだけダイオキシン濃度を減らす努力はするが、(完全には防げないが)焼却灰による二次発生も防ごうという方針であろう。限りなくダイオキシン排出濃度を低める努力は大いに行っていただきたいが、我々もあらゆる方面からリサイクルをすすめ、循環型社会を築く努力をして行きたい。



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