◇現場担当者の裏話◇

1997/04末...初めてチョッパーの現場に立ち会う


 毎日、70リットル入りポリ容器で運ばれてくる生ゴミを見ているといろいろなことが見えてくる。
ホテルから出る生ゴミには、半分しか食べられていないロブスターや、全然手をつけていない果物など平気で捨てられている。昨日のお客さんの宿泊料金が高いか安いか、出されたメニューが好評だったかどうかまでわかってしまう。お客さんがどれくらいの人数だったかまで、おそろしいくらいわかってしまうのである。昔の料理人は、弟子を鍛えるときに「ゴミからすべてのことを学べ」と言っていたそうだが、確かにそのとおりだとおおいに納得してしまった。
 ともあれ、大きな固まりのままの生ゴミより、粉砕されていたほうが発酵が早くなるだろうということで、チョッパーにかけることになった。
 70リットル入り容器をチョッパーの口まで持ち上げ、少しずつ注ぎ込むのは結構大変な作業である。ミンチ状になった生ゴミがグニュグニュと押し出され、もはや原材料が何だったかわからない固めのおかゆ状になる。もと肉や魚のアラなどが多いと、結構生臭いゴミの匂いが漂う。動物性蛋白質は分解が早いから、腐る前でも鮮度が落ちるとすぐ匂うのだ。手についたりすると、よく洗わないとゴミの匂いが残ったりする。
 野毛病院院長いわく、「これじゃあ、彼女なんてできないよ」。
でも、ご安心を。生ゴミ処理の場合、ゴミの匂いがするのはこの時だけで、処理機に入れてしまえば殆ど匂わないし、発酵が進むとだんだんいい匂いがしてくる。
 ゴミは臭いという先入観があったが、それは腐らせてしまう人間のせいで、早いうちなら殆ど匂わないものなのだ、ということが実感できる。

 発酵が進んだ堆肥は香ばしく、暖かく、私達をやさしくつつんでくれる。
 すべてのものが土に環る、それをちょっと早くするお手伝いをしているだけなのだと謙虚に思う。




▲Back